「物語はパターンとバリエーションからできてる」という考え方を一冊まるまる解説しています。 漫画や小説のヒットするパターンというのは決まっているのだから、そこにはほとんど工夫の余地はないと言い切っています。 だからと言って、物語がつまらなくというわけではなく、バリエーションを持たせることによっていくらでもヒット作は生み出せる。
文章の書き方的な教本ではないので、そこだけは注意ですが、ストーリーのパターンというものを学べる良書かと思います。 以下、個人的に大事そうなところをまとめ。
- ストーリーを作るコツは、「すべての物語はパターンとバリエーションからできている」と割り切ること。
- 多作な作家が生き残る。著名な小説家やマンガ家は多作である。専業作家で食べていくには、年に6冊の新作を書かないといけない。オリジナル、オリジナル、って考えている人には絶対に無理。
- 多作になるためには、ストーリーをシステマティックに作らなければならない。必要なのは情報のインプット。ストーリー作りはなにからでも学べる。小説だけでなく、マンガをどんどん読もう!アニメを観よう!特撮を見よう!
- 新聞にはネタがたくさんあるが、テレビ欄の裏(39面)の社会面のメインは大きな事件を扱うところで、皆がこの事件をネタにしようとするので、その情報は捨てた方がいい。38面の下の、B級、C級な隅っこの記事が実は面白く狙い目。
- 自分は天才だと思っている人は、「勝たなくてもいい。わかる人にだけわかれば」と思っているから勝つことはできない。「なにがなんでも小説家になる!」と強く思っている人が小説家になれる。
- 小説家の人はナチュラルに嘘をつく。これもサービス精神の表れ。とにかくみんな話を大きく大きくしようとする。これは職業病みたいなもので、常に人を喜ばせたいと思うのが小説家。
- 長続きするマンガで大事なのは「読者の期待を裏切らないこと」。こち亀の両さんは必ず最後に大目玉を食らう。ドラゴンボールの悟空は戦うたびに強くなって相手を倒す。ゴルゴの弾は必ず命中する。ワンパターンは決して悪いことではない。「待ってました!」は褒め言葉です。
- 逆に完全なオリジナルは売れない。個性的だから、先がわからない。わからないから、期待も持てない。期待できないから、わくわくできない。だから売れない。本当のオリジナルを書いた作家は、たいてい死んでから売れる。画家のゴッホだってそう。ギャグマンガ家が長続きしないのは、ギャグに使い回しがきかず、常にオリジナルを必要とされるから。
- 「元ネタはありません。オリジナルです。」という作品は罵られるが、「このマンガには元ネタがある。さぁ探してみろ!」とほのめかされているとみんな喜んで元ネタを探す。ケロロ軍曹がよい例。
- 同じ作者の複数の作品に、同じキャラクターや名前だけ変えたキャラクターが登場する「スター・システム」はもともと映画業界用語だが、マンガ業界でも有名。手塚治虫氏はマンガのスター・システムの創始者と言われている。みんなスター・システムが大好き。あっちのマンガで出ているキャラが、別のマンガで出ていると大喜びする。同じようなキャラを登場させることを堂々と宣言するのがよい。小説でも、売れっ子の人は、キャラに関してワンパターンであることが多い。
- 自分の得意なストーリーの「パターン」を早く見つけて、それを自分の「スタイル」と言うのがよい。ワンパターンと言われると腹が立つけど、スタイルと言われるとカッコいい。さらに、人気作家になると「◯◯ワールド」と言われるようになる。
- 不思議なことに、他の作品や意見を参考にしないで作ろうとすればするほど似てしまう。他の作品のパターンを組み合わせて自分の世界を作ってしまった方がよい。
- 大事なのは「書きたいもの」ではなく、「それを書きたいという気持ち」。その気持ちの源泉は何でもいい。有名になりたい、モテたい、あっと言わせたい、即売会に間に合わせたい。モチベーションに貴賎はない。書こうという気持ちが薄らぐ日が来たときのために、モチベーションの源泉、自分なりのモチベーションの素をストックしておくことはとても大切。
小説を書く手順
- パターン決め
- バリエーション決め
- あらすじ作り
- 原稿執筆
1. パターン決め
下記の4つのパターンが物語の王道。
- 主人公成長・破滅もの
- 長編は書きやすいが、短いストーリーが求められる新人賞などは取りにくい。だから、最初にこのパターンを使うのはオススメできない。
- 旅もの
- 一話完結でバリエーションをつけやすい。格闘マンガもコレに分類できる。
- 最初から英雄・天才もの
- 初心者向け。短編が書きやすい。分野を絞るのがコツだが、マイナーすぎるネタではよくないので、組み合わせを考えるとよい。
- 特殊なキャラ日常ひっかきまわしもの
- キャラの魅力がすべて。アニメ化しやすい。友人、知人と相談して決めていくのがよい。オリジナリティが一番必要。キャラの職業設定に困ったら「居候」がおすすめ。
この4つのうち1つでも習得できれば、一生食うには困らない。 逆にコロコロ変えると「ワールド」が作れなくて困ったことになる。
2. バリエーション決め
パターンは「ケーキ台」で、バリエーションは「クリーム」。 バリエーションで決めることは下記の4つ。
- 超目的(テーマ)
- ストーリー上における、主人公の目的および目標。格闘ものなら「主人公が世界で一番強い男になる」で、探偵ものなら「主人公が真犯人を見つける」。
- キャラ
- 登場人物。
- ウリ(特徴)
- その作品で最も特徴的な事柄で、その作品にしかない魅力的な部分。ドラえもんであれば「道具を出すロボット」で、DEATH NOTE であれば「人を殺せるノート」。このウリの良し悪しで作品の人気が決まる。
- 世界観
- 物語の世界の時代と場所と様子。
パターンはすぐに決まるが、このバリエーション決めには時間をかけなければいけない。 バリエーションは小説の命であって、逆に言うと考えるところはここしかない。 パターンで期待させ、バリエーションでハラハラドキドキさせる。先が見えるのは OK だが、過程は秘密にしておくということ。
パターンとこの4つが決まると、話が固まってくる。 例えば「桃太郎」だと、超目的は「勧善懲悪」、キャラは「桃太郎、犬、猿、キジ、おじいさん、おばあさん、鬼」、ウリは「主人公が桃から生まれている、家来が動物である」、世界観は「中世日本」。
「世界観」に関しては、小説の執筆依頼時に編集者が決めてくることが多い。例えば、「架空戦記」だったら「第二次世界大戦中の日本」など。「キャラ」の制約までつけられることもある。制約のない仕事などどこの世にもないのだから、がんばれるところでがんばるしかない。 たくさんマンガを読んで、バリエーションの蓄積を作るべし。
3. あらすじ作り
あらすじの字数は短ければ短い方がよく、できれば100文字以内、上限300文字以内におさまる内容にする。 本の裏表紙に書けるスペースは限られているし、読者に魅力を簡潔に伝えられなければいけない。 素晴らしいあらすじができたら、もうその作品は素晴らしい作品になることが決まったようなもの。
4. 原稿執筆
書けない人の訓練方法(3ステップ)
- ピーナッツを毎日1粒食べる
- 小説家にとって「継続すること」は何よりも大事。下らないことでも信じて1日も欠かさず継続するということは小説家修行になる。
- 毎日ブログ(文章)を3行でもいいので書く
- 1日も欠かさず書くことはとてもいい訓練になる。書かなきゃ小説はできない。書かない名作は絶対にない。これができるかできないかで、「読むのが好き」なのか「書くのが好き」なのかがはっきりする。
- 毎日好きな小説を書き写す
- 一字一句丸写しすることで、その作家の小説のリズムを学ぶことができる。手書きじゃなくても、パソコンでカチャカチャ打つだけでもとても勉強になる。
人は突然変わったりしないので、3ついっぺんにやってはダメ。 1ステップずつ確実に継続することでしか自分を変革することはできない。
読者をハラハラドキドキさせるには
初心者に多いのが、「主人公のミス」「上司のミス」でスリルを作ろうとするもの。 味方のミス(内輪もめ)では話が白けてしまう。 死闘を生むには、敵を味方より強くすればいい。
敵やライバルを魅力的なものにするには、敵の立場で考えること。 敵は、常に敵にとってベストの手段を選ぶ、ということを忘れないように。 主人公にとって都合の良いように振る舞わせるのは、あなたにとっての都合でしかない。
裏技としては、魅力的な敵と味方を作った時点で、本原稿を書き始めてしまう方法がある。 交互に敵と味方の視点にたって、知恵の出る限りを尽くして戦わせ、最終的に勝ち残った方を主人公にしてしまえばよい。
先にあらすじができていると使えないけど。