ここでは、Node.js 用の AWS SDK ver.3 を使って Amazon DynamoDB を操作する方法を説明します。
TypeScript の基本的な環境構築 は終わっているものとします。
DynamoDB 用の Node.js SDK (ver.3) をインストールする
まずは、AWS SDK version 3 の DynamoDB 用パッケージをインストールします。
DynamoDB を操作するときに主に次のようなクライアントクラスを使用するのですが、後者の DynamoDBDocumentClient
の方は、前者の DynamoDBClient
インスタンスをラップして扱いやすくするためのクラスなので、必要に応じてインストールしてください(主にテーブル内のアイテムを扱うときに便利です)。
- DynamoDBClient
- DynamoDB を扱うための基本クラス(DB クライアントと呼ばれる)
@aws-sdk/client-dynamodb
パッケージが必要
- DynamoDBDocumentClient
- 上記を扱いやすくするためのクラス(Document クライアントと呼ばれる)
@aws-sdk/lib-dynamodb
パッケージが必要@aws-sdk/util-dynamodb
パッケージも必要っぽい
これで、TypeScript コードから次のようにパッケージ内のクラスをインポートできるようになります。
DynamoDBClient / DynamoDBDocumentClient インスタンスの生成
DynamoDB の API を呼び出すには、まずは DynamoDBClient
インスタンスを生成する必要があります。
さらに、抽象度の高い API を使用したい場合は、DynamoDBDocumentClient
インスタンスも生成します。
import { DynamoDBClient, DynamoDBClientConfig } from '@aws-sdk/client-dynamodb'
import { DynamoDBDocumentClient } from '@aws-sdk/lib-dynamodb'
const config: DynamoDBClientConfig = {
// ...接続設定...
}
const dbClient = new DynamoDBClient(config)
const documentClient = DynamoDBDocumentClient.from(dbClient)
DynamoDBClient
のコンストラクタには、DynamoDBClientConfig オブジェクトを渡すようになっており、これで接続先のリージョンやエンドポイント URL などを設定できるようになっています。
下記に、いくつか接続設定の例を示します。
DynamoDB Local(テスト用ローカルサーバー)に接続する場合
DynamoDB Local テストサーバ (localhost:8000) に接続するには次のように設定します。
ポイントは endpoint
プロパティにローカルアドレスを指定するところです。
region
や credentials
はダミーの値で大丈夫です。
const config: DynamoDBClientConfig = {
endpoint: 'http://localhost:8000',
region: 'ap-northeast-1',
credentials: { accessKeyId: 'FAKE', secretAccessKey: 'FAKE' },
}
環境変数で設定した Credential 情報で接続する
const config: DynamoDBClientConfig = {
endpoint: process.env.DYNAMODB_ENDPOINT,
region: process.env.DYNAMODB_REGION ?? 'ap-northeast-1',
credentials: {
accessKeyId: process.env.DYNAMODB_ACCESS_KEY_ID ?? 'FAKE',
secretAccessKey: process.env.DYNAMODB_SECRET_ACCESS_KEY ?? 'FAKE',
},
}
DynamoDB Local ではなく、本物の DynamoDB サービスに接続する場合は、endpoint
プロパティを undefined
にしておけば OK です(つまり、prcess.env.DYNAMODB_ENDPOINT
環境変数を設定しなければ OK)。
Cognito 認証&認可で取得したアクセストークンで接続する
Web アプリなどから AWS 上の DynamoDB にアクセスしたいのであれば、Cognito による認証情報などを使って、次のようなコンフィギュレーションを行えば接続できます。
// import { Auth } from 'aws-amplify'
const config: DynamoDBClientConfig = {
region: 'ap-northeast-1',
credentials: await Auth.currentCredentials() // Cognito サインイン済みと仮定
}
認証情報ファイルの設定で接続する
aws configure コマンドなど で設定した認証情報を使って DynamoDB に接続する場合は、コンフィグ情報に何も設定しなければ OK です。
const config: DynamoDBClientConfig = {}
(おまけ)SDK version 2 時代のコンフィグ
テーブルを作成する (CreateTableCommand)
DynamoDB のテーブルを作成するには、DynamoDBClient#send
メソッドで、CreateTableCommand を送ります。
次の例では、Games
という名前のテーブルを作成しています。
DynamoDB は NoSQL なので、基本的に属性を前もって定義しておく必要はありませんが、プライマリーキー(パーティションキー、およびソートキー)だけはテーブル作成時に指定する必要があります。
Games
テーブルでは、次のようなプライマリーキーを定義しています。
Hardware
: 文字列型 (S) のパーティションキー (HASH)GameId
: 文字列型 (S) のソートキー (RANGE)
DynamoDBClient#send
メソッドの戻り値は Promise
型になるので、コマンドの結果を参照する場合は、上記のように await
で待機する必要があります。
例外
すでに同名のテーブルが存在するときに CreateTableCommand
を送ると、ResourceInUseException
という例外が発生します。
err.code === 'ResourceInUseException'
… Table already exists
テーブルを削除する (DeleteTableCommand)
DynamoDB から既存のテーブルを削除するには、DynamoDBClient.send
で DeleteTableCommand を送ります。
パラメーターはテーブル名 (TableName
) だけでいいので簡単です(もちろんテーブルの削除は慎重に行わなければいけませんが)。
例外
削除しようとしたテーブルが存在しない場合や、使用中の場合は例外が発生します。
err.code === 'ResourceNotFoundException'
… Table not founderr.code === 'ResourceInUseException'
… Table in use
テーブルの一覧を取得する (ListTablesCommand)
DynamoDB に存在するテーブルの一覧を取得するには、DynamoDBClient#send
で ListTablesCommand を送ります。
パラメータは空っぽの ListTablesInput オブジェクトを渡しておけば OK です。
戻り値の ListTablesCommandOutput オブジェクトの TableNames
プロパティに、テーブル名のリストが格納されています。
テーブルの詳細情報を取得する (DescribeTableCommand)
指定したテーブルの詳細情報(スキーマなど)を調べるには、DynamoDBClient#send
で DescribeTableCommand を送ります。
パラメータには TableName
を指定します。
アイテムを追加する (PutItemCommand)
テーブルに新しいアイテムを追加したいとき(あるいは既存のアイテムの属性値を上書きしたいとき)は、DynamoDBClient#send
メソッドで PutItemCommand を送ります。
追加するアイテムのプライマリキー属性(パーティションキー、およびソートキー)の指定は必須ですが、その他の属性はオプショナルです。
プライマリキーと一致するアイテムがまだ存在しない場合は、新規アイテムの追加になり、プライマリキーと一致するアイテムがすでに存在する場合は、属性値のリプレースになります(このとき、指定しなかった属性値は消えてしまうことに注意してください)。
上書きされる前のアイテムの内容を取得する
PutItemCommand
コマンドを送信したときに、プライマリキーと一致するアイテムがすでに存在する場合は、新しく指定した属性値でその内容が置き換えられます。
このとき、もとのアイテムがどのような属性を持っていたかを調べたいときは、PutItemCommand
を生成するときに、ReturnValues
プロパティを指定します。
コマンド送信の結果の Attributes
プロパティでもとの属性値を参照できます。
すでにアイテムが存在する場合に無視する
PutItemCommand
コマンドはデフォルトではアイテムの内容を上書きしますが、この振る舞いを抑制したいときは、コマンドのパラメータに次のように ConditionExpression
を指定します。
このようにすると、プライマリキーが一致するアイテムがすでに存在する場合に ConditionalCheckFailedException
例外が発生するようになります。
アイテムの属性値を部分的に更新する (UpdateItemCommand)
DynamoDBClient クラスを使う方法(複雑)
既存のアイテムの内容(属性値)を部分的に更新したいときは、DynamoDBClient#send
メソッドで UpdateItemCommand を送ります。
PutItemCommand
でも既存のアイテムを更新できますが、PutItemCommand
は完全に上書きのため、すべての属性値を指定し直さないといけないません。
一方、UpdateItemCommand
を使用すると、指定した属性のみを部分的に更新できます。
なお、どちらも指定したアイテム自体が存在しない場合にアイテムが生成されるのは同様です。
UpdateItemCommand
で属性値を更新するときのパラメータの指定方法は若干複雑で、プレースホルダを使って新しい属性名 (#xxx
) と属性値 (:xxx
) を指定する必要があります。
次の例では、既存のアイテムの Title
属性の値を更新し、さらに新しい属性 Maker
を追加しています。
DynamoDBDocumentClient クラスを使う方法(簡単)
DynamoDBClient
をラップする DynamoDBDocumentClient
を使うと、もう少し簡単にアイテム内容(属性値)の更新を行うことができます。
コマンドとしては、@aws-sdk/lib-dynamodb
モジュールが提供する UpdateCommand を使用します(なぜ対称性のある UpdateItemCommand
という名前にしなかったのかは不明)。
プライマリキーの指定 (Key
) や、新しい属性値の指定 (ExpressionAttributeValues
) において、各値の型(S
など)を指定する必要がなくなり、コードがスッキリしました!(というか標準のクラスの方でこうなっているべきな気がしますけど…)。
アイテムを取得する (GetItemCommand, GetCommand)
DynamoDBClient を使う方法(複雑)
DynamoDB のテーブルから既存のアイテムを 1 つ取得するときは、DynamoDBClient#send
メソッドで GetItemCommand を送ります。
パラメータには、テーブル名 (Table
) と、アイテムを特定するためのプライマリキー情報 (Key
) を指定します。
指定したプライマリキーに一致するアイテムが見つからないときは、Item
プロパティの値が undefined
になります。
DynamoDBDocumentClient を使う方法(簡単)
DynamoDBDocumentClient
を使うと、プライマリキーや戻り値の値の型指定(S
など)を省略することができます。
DynamoDB テーブルから 1 つのアイテムを取得するには、DynamoDBDocumentClient#send
メソッドで GetCommand を送ります。
アイテムを削除する (DeleteItemCommand)
DynamoDB のテーブルからアイテムを削除するには、DynamoDBClient#send
メソッドで DeleteItemCommand を送ります。
コマンドのパラメータには、テーブル名 (Table
) と、削除対象のアイテムを特定するためのプライマリキー情報 (Key
) を渡す必要があります。
複合プライマリキーを使用している場合は、パーティションキーとソートキーの両方を指定する必要があります。
指定したプライマリキーに一致するアイテムが存在しない場合でも、特に例外が発生するということはないようです。
テーブル内のアイテムをすべて取得する (ScanCommand)
DynamoDBClient を使う方法(複雑)
DynamoDB のテーブルからすべてのアイテムを取得(=スキャン)するには、DynamoDBClient#send
メソッドで ScanCommand を送ります。
コマンドのパラメータには、テーブル名 (Table
) を指定します。
上記ドキュメントサイトにも記載がありますが、1 度のスキャンで取得できる最大データサイズは 1MB です。
それを超える場合は、レスポンスに含まれている LastEvaluatedKey
を使って続きのデータを要求できます(ページング処理)。
最初から何件ずつアイテムを取得すべきかが決まっている(例えば、テーブルに 10 件ずつ表示する)のであれば、ScanCommand
の Limit
プロパティにその数を指定できます。
DynamoDBDocumentClient を使う方法(簡単)
上記の実行結果を見ると分かるように、DynamoDBClient#scan(ScanCommand)
で返される JSON データは扱いやすい形式になっていません(いちいち S
とか N
とかフィールドタイプが入る)。
そこで、ドキュメントクライアント (DynamoDBDocumentClient
) の出番です。
DynamoDBDocumentClient
は DynamoDBClient
を扱いやすくするためのクラスで、これを使うと、テーブルのスキャン結果を扱いやすい JavaScript オブジェクトとして取得することができます。
下記は、DynamoDBDocumentClient
を使ったテーブルスキャン(全アイテム取得)の例です。
ScanCommand
は @aws-sdk/client-dynamodb
モジュールが提供するものではなく、@aws-sdk/lib-dynamodb
が提供するものを使う必要があります。
こちらの実行結果を見ると、Items
プロパティの下に、JavaScript オブジェクトの配列が直感的な形式で格納されています。
このプロパティ値に TypeScript の型情報を付けてやれば、あとは簡単にデータ参照できます。
上記で実装した scan()
関数を外から呼び出したい場合は、次のような感じで Promise
オブジェクトを返すように実装します。
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