BotState クラス
Bot Builder SDK の BotState クラス は、ボットとの会話内の特定のコンテキストにおける状態を保持するためのクラスです。
というと難しいですが、簡単に言うと、会話ごとの状態保存や、ユーザーごとの状態保存を行うための便利クラスです。
BotState
クラスには次のようなサブクラスが定義されています。
- ConversationState クラス … 会話ごとの状態を保存する
- UserState クラス … ユーザーごとの状態を保存する
- PrivateConversationState クラス … 会話ごとのユーザごとの状態を保存する
これらのクラスは、内部で Storage オブジェクトを利用します。
Storage
がグローバルに状態保存を行っていたのに対し、BotState
はネームスペースを考慮して状態保存を行うものだと考えることができます。
実際に、ConversationState
クラスや UserState
クラスの実装を覗いてみると、getStorageKey()
というメソッドでストレージ用の保存キーを作成しており、それぞれ次のように構成しています。
- ConversationState が使用する保存キー
${ channelId }/conversations/${ conversationId }/${ this.namespace }
- UserState が使用する保存キー
${ channelId }/users/${ userId }/${ this.namespace }
- PrivateConversationState が使用するキー
${ channelId }/conversations/${ conversationId }/users/${ userId }/${ this.namespace }
実用的なボットの状態管理を行うには、Storage
インタフェースをそのまま使うのではなく、ConversationState
/ UserState
/ PrivateConversationState
などを使うことになるでしょう。
ConversationState と UserState クラスを使用する
インスタンス化
ConversationState
や UserState
のインスタンスを作成するには、コンストラクタに Storage
オブジェクトを渡します。
ここでは、ストレージとして MemoryStorage
を使用していますが、CosmosDbStorage
などを使用することもできます。
UserState クラスでカウンタを保存する
下記のボットクラスでは、UserState
オブジェクトを使って、ユーザーがメッセージを送った回数をカウントしています。
UserState
に対して値を読み書きするには、UserState#createProperty()
を使ってプロパティアクセサーを作成します。
ここでは、counter
という名前のプロパティアクセサーを作成しています。
これで、ユーザーごとに、ボットと会話した回数をカウントできるようになります。
上記のボットクラス実装では、UserState
が使用する Storage
オブジェクトをコンストラクタで受け取るようにしています。
index.js
など、ボットクラスを生成する側で MemoryStorage
や CosmosDbStorage
などのインスタンスを渡すようにしてください。
ConversationState クラスでカウンタを保存する
上記の例では、UserState
を使ってカウント値を保存していたので、ユーザーごとにカウント値がインクリメントされていきます。
new UserState
という部分を、new ConversationState
に変えるだけで、会話ごとにカンウント値を管理できるようになります。
例えば、Slack で考えてみるとわかりやすいです。
UserState
にカウント値を保存した場合は、ユーザーがチャンネルを移動しながら会話をしたときに、カウント値が引き継がれてインクリメントされていきます。
Channel1: 1 → 2 → 7
Channel2: 3 → 5 → 9
Channel3: 4 → 6 → 8
一方、ConversationState
にカウント値を保存した場合は、チャンネルごとにカウント値が管理されるので、各チャンネルごとに初期値の 1 からインクリメントされていきます。
ただし、このカウント値はチャンネルの中で一意なものになるので、ユーザー間で共有されます。
Channel1: 1 → 2 → 3
Channel2: 1 → 2 → 3
Channel3: 1 → 2 → 3