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厳格モードに関するオプション

TypeScript の設定ファイル (tsconfig.json) には、厳格な型チェックを有効にするための strict オプションが用意されています。

プロパティ名デフォルト値説明
strictfalseEnable all strict type checking options.
コンパイル時の様々な厳格な型チェック機能を有効にします。
tsconfig.json の記述例
{
  "include": [
    "src/**/*"
  ],
  "compilerOptions": {
    "target": "ES2015",
    "module": "commonjs",
    "allowJs": true,
    "outDir": "./build",
    "strict": true   /* Enable all strict type-checking options. */
  }
}

上記の例では、tsconfig.jsonstrict オプションを有効にしていますが、tsc コマンドのオプションで --strict と直接指定する方法もあります。

$ tsc --strict

実は、strict オプションは、下記のようなオプション群をまとめて true にするためのオプションです。

プロパティ名デフォルト値説明
noImplicitAnyfalseRaise error on expressions and declarations with an implied any type.
noImplicitThisfalseRaise error on this expressions with an implied any type.
alwaysStrictfalseParse in strict mode and emit “use strict” for each source file.
strictBindCallApplyfalseEnable strict bind, call, and apply methods on functions.
strictNullChecksfalseEnable strict null checks.
strictFunctionTypesfalseEnable strict checking of function types.
strictPropertyInitializationfalseEnable strict checking of property initialization in classes.

TypeScript 3.8 時点では、strict オプションを有効にすることで、これらのオプション群がまとめて有効化されますが、将来の TypeScript (tsc) バージョンでは、これらのオプション群は、そのとき推奨される組み合わせに変更されるとされています。 つまり、strict オプションを有効にしておくと、TypeScript のバージョンを上げたときに、新しいエラーが表示されるようになる可能性があります。

いずれにしても、 strict オプションは常に有効にして tsc ビルドする ことで、TypeScript コードの型安全性を高めておくことをお勧めします。

少しずつ strict 対応していく方法

strict オプションはデフォルトでは false になっているため、 プロジェクトが巨大化してから strict オプションを有効化すると、大量のエラーが表示される可能性 があります。 大量のエラーを一気に直さないといけないので大変です。

そのような場合は、下記のように、個別の strict 系オプションを 1 つずつ有効にして対応していきましょう。

tsconfig.json(抜粋)
{
  "compilerOptions": {
    /* 簡単に対応できそうなところから有効化していく */
    "noImplicitAny": false,
    "noImplicitThis": true,
    "alwaysStrict": true,
    "strictBindCallApply": true,
    "strictNullChecks": false,
    "strictFunctionTypes": false,
    "strictPropertyInitialization": false
  }
}

JavaScript から乗り換えたコードの場合、下記のような noImplicitAny によるエラーがたくさん出ると思います。 これは、関数のパラメータの型指定が足りないというエラーですが、これを一気に対応するのは大変なので後回しにするのがよいかもしれません。

noImplicitAny によるエラーの例
src/main.ts:27:56 - error TS7006: Parameter 'res' implicitly has an 'any' type.

次のように、strict オプションで全ての型チェックをまとめて有効化しておいて、個々の警告を無効にするという指定もできます。

tsconfig.json(抜粋)
{
  "compilerOptions": {
    /* ... */
    "strict": true,  /* 全ての型チェックを有効化 */
    "noImplicitAny": false  /* 個別に無効化 */
  }
}

個別の strict 系オプションをすべて true にして状態で警告が出なくなったら、下記のように書き換えて strict 対応完了です。

tsconfig.json(抜粋)
{
  "compilerOptions": {
    /* ... */
    "strict": true
  }
}

こっそり少しずつ strict 対応する方法

strict オプションによる型チェックでエラーが発生すると、デフォルトでは JavaScript (.js) ファイルの出力が停止されるので、設定ファイル (tsconfig.json) で strict オプションを有効化するのは厳しいということがあるかもしれません。 そのような場合は、次のように tsc コマンドの --strict オプションで、一時的に厳格な型チェックを有効化することができます。

$ tsc --strict

これでエラーを確認しながら少しずつ TypeScript コードを修正していき、エラーがなくなった時点で tsconfig.jsonstrict オプションを有効化するというのがよいでしょう。

ちなみに、型チェックなどでエラーが発生しても JavaScript (.js) ファイルの出力を停止しないというオプション (--noEmitOnError false) がありますが、ちょっと危険な香りがするのであまり使わない方がよいと思います。

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