MUI v5 以降のカスタムスタイル設定
MUI v5 以降でコンポーネントにカスタムスタイル (CSS) を割り当てる方法には、大きく下記の 2 つのやり方があります。
- sx prop を使う方法
- MUI のコンポーネントには sx prop が定義されていて、ここにスタイルオブジェクトを渡すことで、個別にスタイルを調整できます。つまり、使い捨てのスタイル設定を行う方法です。sx prop は HTML 要素本来の style プロパティと比べて簡潔な構文で記述できます。例えば、margin や padding の設定用に 1 文字 (
m
,p
) のプロパティ名が定義されていたりします。
- MUI のコンポーネントには sx prop が定義されていて、ここにスタイルオブジェクトを渡すことで、個別にスタイルを調整できます。つまり、使い捨てのスタイル設定を行う方法です。sx prop は HTML 要素本来の style プロパティと比べて簡潔な構文で記述できます。例えば、margin や padding の設定用に 1 文字 (
- styled API を使う方法
- 既存のコンポーネントをラップする形で、スタイル拡張したコンポーネントを生成します。sx prop を使った方法に比べて再利用性が高い方法で、複数個所で使用するコンポーネントにスタイル設定したいときに便利です。
styled()
関数は内部的には Emotion というライブラリが提供する関数につながっていますが、MUI では@mui/material/styles
パッケージをインポートすることで使えるようになっています。
- 既存のコンポーネントをラップする形で、スタイル拡張したコンポーネントを生成します。sx prop を使った方法に比べて再利用性が高い方法で、複数個所で使用するコンポーネントにスタイル設定したいときに便利です。
いずれの方法でも、テーマ設定(theme オブジェクト)に基づいたカスタマイズが可能で、この仕組みにより、アプリ全体のデザインに一貫性を持たせやすくなっています。
withStyles()
や createStyles()
といった関数を使用していましたが、MUI v5 以降は、動的スタイルにおけるパフォーマンスがよい Emotion の styled()
関数を使うように変更されました。
MUI v5 を使用するアプリケーションでも @mui/styles
パッケージをインポートすれば withStyles()
や createStyles()
関数を使用できますが、@mui/styles
パッケージは deprecated(非推奨)扱いとなっています。
代わりに、@mui/material/styles
パッケージの styled()
関数を使いましょう。以下、2 つのやり方を詳しく見ていきます。
sx prop によるスタイル設定
MUI コンポーネントに実装されている sx prop を使うと、様々な省略記法 を使って、テーマ (theme) に基づいたスタイル設定を行うことができます。
このプロパティに渡すオブジェクトは、具体的には SxProps<Theme>
型ですが、TypeScript で型情報を扱うケース以外は意識する必要はありません。
次のサンプルコードでは、MUI の div
要素的な位置付けの Box
コンポーネントに対して sx prop でスタイル指定しています。
sx prop にはオブジェクトを渡すため、コードは sx={{ ... }}
のように中括弧が 2 つ続く形になることに注意してください。
// import { Box } from '@mui/material'
<Box
sx={{
boxShadow: 1, // boxShadow: theme.shadows[1]
color: 'primary.contrastText', // color: theme.palette.primary.contrastText
bgcolor: 'primary.main', // background: theme.palette.primary.main
m: 1, // margin: theme.spacing(1)
p: {
xs: 1, // [theme.breakpoints.up('xs')]: { padding: theme.spacing(1) }
},
zIndex: 'tooltip', // zIndex: theme.zIndex.tooltip
}}
>
This is a box
</Box>
各プロパティの末尾のコメントは、省略記法を使わなかった場合にどのような記述になるかを示しています。
テーマ設定を利用した値の記述がシンプルになるだけでなく、プロパティ名自体もシンプルなものが定義されています。
特に、マージンの指定方法は m: 1
というように、ものすごく短く書けるようになっています。
sx prop が独自で定義している m
のようなプロパティを、カスタムシステムプロパティ と呼びます。
よく使いそうなカスタムシステムプロパティをいくつか紹介していきます。
マージン (m)、パディング (p)
マージンやパディングの設定は頻繁に行われるので、カスタムプロパティには 1 文字や 2 文字の非常に短い名前が付けられています。
- マージン
m
… 上下左右のマージンmx
… 左右のマージンmy
… 上下のマージンmt
,mb
,ml
,mr
… それぞれ上下左右のマージン
- パディング
p
… 上下左右のパディングpx
… 左右のパディングpy
… 上下のパディングpt
,pb
,pl
,pr
… それぞれ上下左右のパディング
マージンやパディングの値として数値だけを指定すると、単位はテーマの spacing
に設定したピクセル数となります(デフォルトは 8px)。
具体的なピクセル数を 24px
のように指定することも可能ですが、テーマで設定されたスペース単位で配置することで、全体のレイアウトに統一感が出ます。
例えば、次のように指定すると、上下左右のマージンが 16px (= 8px x 2) に設定されます。
<Box sx={{ m: 2 }}>...</Box>
さらに、これらのカスタムシステムプロパティは、sx prop オブジェクト経由ではなく、次のように MUI コンポーネント自体の prop としても指定できるようになっています。 ちょこちょこっとスタイル指定する場合は、こちらの方が簡潔に書けます。
<Box m={2}>...</Box>
色 (color, bgcolor)
color
でテキスト色、bgcolor
で背景色を指定します。
値には、次のようにドット区切りでテーマのパレットキー名を指定することができます。
<Box sx={{ color: 'primary.contrastText', bgcolor: 'primary.main' }}>Primary</Box>
<Box sx={{ color: 'secondary.contrastText', bgcolor: 'secondary.main' }}>Secondary</Box>
<Box sx={{ color: 'success.contrastText', bgcolor: 'success.main' }}>Success</Box>
<Box sx={{ color: 'error.contrastText', bgcolor: 'error.main' }}>Error</Box>
<Box sx={{ color: 'info.contrastText', bgcolor: 'info.main' }}>Info</Box>
例えば、'primary.main'
というパレットキー名は、theme.palette.primary.main
に設定されたプライマリ色に置き換えられます。
指定可能なパレットキー名の一覧は、Default Theme - MUI のページで確認できます。
これらのカスタムシステムプロパティも、MUI コンポーネント自身の prop として直指定できます。
<Box color="error.contrastText" bgcolor="error.main">
カラー値として、ドットを含まない文字列を指定すれば、従来のカラー名や HEX 値で色指定できます。
<Box sx={{ color: 'white', bgcolor: '#f00' }}>
レスポンシブデザイン
次の例では、ブラウザの横幅によって Box コンポーネントの色を切り替えています。
<Box sx={{
bgcolor: {
xs: 'red', // [theme.breakpoints.up('lg')]: 'red'
sm: 'blue', // [theme.breakpoints.up('sm')]: 'blue'
md: 'yellow', // [theme.breakpoints.up('md')]: 'yellow'
lg: '#00ff00', // [theme.breakpoints.up('lg')]: '#00ff00'
xl: '#000000', // [theme.breakpoints.up('xl')]: '#000000'
},
}}>
テーマで設定されたブレイクポイント の値よりも、ブラウザの横幅が大きくなったときに採用する色を指定しています。 ブレイクポイントの各キーに設定されたデフォルト値は次のようになっています。
xs
… 0px (extra-small)sm
… 600px (small)md
… 900px (medium)lg
… 1200px (large)xl
… 1536px (extra-large)
ブレイクポイントは、コンポーネントの表示・非表示を切り替えるときにも使えます。
影は 25 段階 (boxShadow)
boxShadow
にはデフォルトで 0~24 の値を設定することができ、値が大きいほど大きい影が付きます(浮いているように見えます)。
0 を指定すると影は表示されません。
<Button sx={{ m: 1, p: 1, boxShadow: 0 }}>shadow = 0</Button>
<Button sx={{ m: 1, p: 1, boxShadow: 1 }}>shadow = 1</Button>
<Button sx={{ m: 1, p: 1, boxShadow: 2 }}>shadow = 2</Button>
<Button sx={{ m: 1, p: 1, boxShadow: 3 }}>shadow = 3</Button>
<Button sx={{ m: 1, p: 1, boxShadow: 4 }}>shadow = 4</Button>
<Button sx={{ m: 1, p: 1, boxShadow: 24 }}>shadow = 24</Button>
印刷時に非表示にする (displayPrint)
印刷時に display
プロパティに反映する値を指定したいときは、displayPrint
カスタムプロパティを使うとシンプルに記述できます。
疑似セレクタ、メディアクエリ、入れ子セレクタ
SxProps 変数を定義して sx prop に渡す
sx prop に渡している値は、SxProps<Theme>
型のオブジェクトなので、次のように変数として定義してから渡すこともできます。
import { Box, SxProps, Theme } from '@mui/material'
const style: SxProps<Theme> = {
m: 1,
bgcolor: 'background.paper',
width: '5rem',
height: '5rem',
}
<Box sx={style}>Hello</Box>
次のようにすれば、スタイル定義を使いまわしつつ、一部のプロパティだけをオーバーライドできます。
<Box sx={{ ...style, border: 1 }}>Box-1</Box>
<Box sx={{ ...style, borderTop: 1 }}>Box-2</Box>
<Box sx={{ ...style, borderLeft: 1 }}>Box-3</Box>
styled API によるスタイル設定
@mui/material/styles
パッケージが提供する styled
関数を使用すると、既存のコンポーネントをラップする形でスタイルを付加することができます。
また、スタイル定義時にテーマオブジェクト (theme) を受け取ることができるので、テーマ設定に基づいたスタイル指定が可能です(というか、theme
オブジェクトを使わないとほぼ設定できません)。
次の例では、MUI の Button
コンポーネントにカスタムスタイルを付加した新しい StyledButton
コンポーネントを定義しています。
import { Button } from '@mui/material'
import { styled } from '@mui/material/styles'
const StyledButton = styled(Button)(({ theme }) => ({
margin: theme.spacing(1),
boxShadow: theme.shadows[3],
color: theme.palette.error.main,
}))
<StyledButton>OK</StyledButton>
styled API によるスタイル定義の中では、sx prop のようなショートカット記法は使えないことに注意してください。
例えば、m: 1
という記述はできず、margin: theme.spacing(1)
と記述する必要があります。
HTML の標準的なコンポーネント、例えば div
などを styled
API でスタイル拡張することもできます。
const StyledDiv = styled('div')(({ theme }) => ({
color: theme.palette.primary.contrastText,
background: theme.palette.primary.main,
margin: theme.spacing(1),
padding: theme.spacing(2),
borderRadius: theme.shape.borderRadius,
fontSize: '20pt',
}))
<StyledDiv>Hello</StyledDiv>
この副次的な効果として、生成されたコンポーネントで sx prop
が使えるようになります。
<StyledDiv sx={{ boxShadow: 6 }}>Hello</StyledDiv>
Next.js での MUI 利用サンプル では、次のように sx prop を有効化するためだけに styled API を使っている箇所があったりします。
// Add support for the sx prop for consistency with the other branches.
const Anchor = styled('a')({});
ネストされた HTML 要素のスタイルを定義することもできます。
次の StyledTable
を table
コンポーネントの代わりに使用すれば、子要素の th
や td
のスタイルも設定されます。
const StyledTable = styled('table')({
borderCollapse: 'collapse',
fontSize: '12pt',
'& th': {
color: '#ddd',
background: '#333',
textAlign: 'left',
padding: '0.2em',
border: '0.5px solid black',
},
'& td': {
color: '#333',
background: '#f6f6f6',
padding: '0.2em',
border: '0.5px solid black',
fontFamily: 'Consolas, "Courier New"',
},
})
(おまけ)styled API によるスタイル定義サンプル
例: テーブルの行を 1 行おきに縞々表示
const StyledTableRow = styled(TableRow)(({ theme }) => ({
'&:nth-of-type(odd)': {
backgroundColor: theme.palette.action.hover,
},
// hide last border
'&:last-child td, &:last-child th': {
border: 0,
},
}))
例: Dark / Light モードによるスタイル切り替え
const Item = styled(Paper)(({ theme }) => ({
backgroundColor: theme.palette.mode === 'dark' ? '#1A2027' : '#fff',
...theme.typography.body2,
padding: theme.spacing(1),
textAlign: 'center',
color: theme.palette.text.secondary,
}))
例: プロパティ値の一部で theme を使う
border: `1px solid ${theme.palette.divider}`,