React は Web サイトの View レイヤのコンポーネントを作るためのライブラリですが、CSS ファイルの扱い方は特に決められておらず、今でも多くの人が試行錯誤しています。 ここでは、React アプリにおける CSS の扱い方を、下記のように分類して順番に説明していきます。
- 従来通り HTML 起点でスタイルを読み込む方法
- インラインスタイル
- CSS Modules
- CSS in JS ライブラリ
HTML ファイルで読み込んだ CSS ファイルを参照する
これは React を使わない従来の HTML/CSS のやり方に近い方法です。
HTML ファイル内の style
要素で定義した CSS クラスや、HTML から読み込んだ CSS ファイル内で定義した CSS クラスを React コンポーネントから使用します。
例えば、HTML ファイル内で次のようにスタイル定義されているとします。
次の Hello
コンポーネントは、1 つの div
要素を生成するだけの簡単な React コンポーネントで、上記で定義した CSS クラス hello
を使用しています。
JSX 要素で CSS クラスを指定する場合は、class
属性ではなく、className
属性を使用することに注意してください。
class
という名前は JavaScript のキーワードと競合するため、このような仕様になっています。
下記は、この Hello
コンポーネントの使用例です。
このようなスタイル定義の方法は、伝統的な HTML/CSS のやり方に近いのでシンプルですが、
- React コンポーネントからスタイル定義が分離してしまう
- グローバルな名前空間でスタイル定義しないといけない
といった課題があります。
インラインスタイル(TypeScript にハードコード)
次の例では、TypeScript コードにハードコードする形でスタイルを定義しています。 このようにすることで、スタイル定義をコンポーネント内で完結できるため、別のコンポーネントと CSS クラス名が競合してしまうという心配がありません。
React.CSSProperties 形式でのスタイル記述
ポイントは、スタイル定義のために React.CSSProperties 型のオブジェクトを作成するところです。
プロパティ名が通常の CSS とは異なることに注意してください。
通常の CSS では、font-weight
や border-radius
のように、プロパティ名の単語はハイフンで区切られますが、React.CSSProperties
では fontWeight
や borderRadius
といったキャメルケースでプロパティ名が定義されています。
これは、JavaScript (TypeScript) の文法上、プロパティ名にハイフンを含められないという制約によるものです。
あと、各プロパティがセミコロン (;
) ではなく、カンマ (,
) で区切られているところも、通常の CSS とは異なりますね。
CSS プロパティ名を使ったスタイル定義
どうしても CSS オリジナルなプロパティ名を使いたいのであれば、次のように、プロパティ名をシングルクォートで囲むことで、CSS のプロパティ名をそのまま使うことができます。
ただし、このようにするとプロパティ名の補完機能が効かなくなるので、できれば React.CSSProperties
型で適宜することをお勧めします。
スタイル定義を入れ子で作成する
複数のスタイル定義を TypeScript コードにハードコードする場合、スタイル定義が複数の変数に散らばってしまうとコードが煩雑になってしまいます。
次の例では、入れ子構造の styles
オブジェクト 1 つでスタイル定義をまとめています。
このようなインラインスタイルでのスタイル指定は、React コンポーネント内にスタイル定義を完結できるという利点はありますが、パフォーマンスの低下や、XSS などのセキュリティの懸念が常に付きまといます。 React に限らず、一般的な Web 設計のプラクティスになりますが、できるかぎり CSS クラスを使った方法を採用した方がよいでしょう。
CSS Modules
CSS Modules の仕組みを利用すると、スタイルの名前空間を CSS ファイル単位(モジュール単位)で分離することができるようになります。 具体的には、外部の CSS ファイルを React コンポーネントなどの TypeScript (JavaScript) コードからインポートすることにより、スタイル設定をそのコンポーネントに閉じて行えるようになります。
従来の HTML + CSS の構成では、CSS の名前空間がグローバルに共有されるため、クラス名が競合しないように最新の注意を払って設計する必要がありました。
BEM などの命名規則の登場により、CSS の設計手法は大分整ってきた感がありますが、やはり大きなサイトになってくると CSS の管理は大きなストレスになります。
このような場合に CSS Modules の仕組みを採用すると、コンポーネントごとに CSS の名前空間が独立しているので、.button
のようなシンプルなクラス名を気軽に使うことができるようになります。
ここでは、最も一般的な? webpack の css-loader
と style-loader
を使った CSS Modules の実現方法を説明します。
CSS ファイルをインポートできるようにする
JavaScript コードには本来 CSS ファイルを解釈する機能は備わっていないので、 webpack などのバンドルツールの力を利用する必要があります。
webpack の拡張として css-loader
を使うと、JS ファイルから CSS ファイルを import
できるようになり、さらに style-loader
を使うことで、JS コードから CSS を出力できるようになります(つまり両方必要です)。
webpack の設定を修正し、css-loader
と style-loader
を使って CSS ファイルを TypeScript (JavaScript) コードから使用できるようにします。
処理順序の都合上、style-loader
を先に指定しないといけないことに注意してください。
これで、次のように TypeScript コードから CSS ファイルをインポートして、React コンポーネントで使用できるようになります。
.css
ファイルは、.ts
ファイルと同じディレクトリに格納しておけば OK です。
これで、TypeScript コードから CSS ファイルをインポートできるようになりましたが、CSS の名前空間はグローバルなままです。
上記の hello
という CSS クラス名は、他のコンポーネントで使っている CSS とバッティングする可能性があります。
CSS をモジュール化する
webpack の設定を次のように変更すると、css-loader
の CSS Modules 機能を有効化できます。
この設定により、React コンポーネントごとに CSS の名前空間が分離されるようになります。
(入れ子がやばい。。。)
実際に出力される CSS のクラス名は、上記の localIdentName
で指定したフォーマットで生成されます。
上記の設定の場合は、「CSSファイル名__CSSクラス名___ハッシュ値」というクラス名になります。
Hello
コンポーネント (hello.tsx
) 用の CSS ファイルは、ベースネームを合わせて hello.css
としてしまうのがシンプルです。
CSS Modules により CSS クラス名の名前空間が独立するので、下記のようなシンプルなクラス名 (.box
) を付けることができます(別に .root
とか .container
とか何でもよいです)。
この CSS ファイルは、React コンポーネントの中から下記のように使用します。
デフォルトエクスポートされたものとして、変数経由(下記の場合は css
)で使用するところがポイントです。
こうすることで、複数の CSS ファイルを複数インポートした場合にも、クラス名がバッティングしません。
基本的にここまでで CSS Modules の導入は完了なのですが、TypeScript を使っている場合は、CSS ファイルをインポートしているところで次のようなエラーが出ます。
これは、CSS ファイルを TypeScript のモジュールとして読み込んでいるのに、肝心の型定義が存在しないよというエラーです。 CSS ファイルごとに型定義ファイルを作ると完璧なのですが、そんなことはやっていられないので、次のような型定義ファイルをソースツリーのルートにおいてしまうのが手っ取り早いです。
まじめに CSS ファイルごとに型定義をするのであれば、hello.css
の型定義ファイルは次のように作成します。
こうすると、VS Code での補完機能なども働くようになりますが、労力には見合わないと思います(こういった型定義ファイルを自動生成する npm モジュールもあります)。
と、ここまで webpack を使った CSS Modules の導入方法を説明してきましたが、はっきりいって面倒 ですね。 思想自体は素晴らしいものなのですが。
ということで、もう少しライトにかつ柔軟にコンポーネント側でスタイル定義を行いたい、という思いから CSS-in-JS なライブラリが数多く登場してきています。
CSS in JS ライブラリ
コンポーネントの TypeScript (JavaScript) コード内で柔軟なスタイル定義も行えるようにしたライブラリが、CSS in JS 系のライブラリです。 下記のように多くのライブラリが開発されています。
有名どころは styled-components でしょうか。 自動でベンダープレフィックスを付けてくれたり、入れ子構造でスタイル定義できたりします。
使い方は次のような感じでとてもシンプルです。
このコードでは Hello
コンポーネントを定義しているのですが、出力関数の中で使っている Title
コンポーネントは、styled-components の機能により生成されています(styled.h1
の部分)。
最終的に、Title
タグを使用した JSX コードは、スタイル付きの h1
要素として出力されます。
Web ページのスタイル定義方法は、これからも試行錯誤が続きそうです。