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何をするか?

ここでは、Go 言語用の gRPC ライブラリである gRPC-Go (google.golang.org/grpc) を使って、簡単な gRPC サーバーとクライアントを作ってみます。 通信用のスタブコードなどは、protoc コマンド (Protocl Buffers Compiler) で .proto ファイルから自動生成するので、あらかじめ protoc コマンドをインストールしておいてください。

protoc コマンドで Go 言語用のコードを生成するには、protoc-gen-go プラグインと protoc-gen-go-grpc プラグインをインストールしておく必要があります。 前者がシリアライズ用のコード、後者が gRPC 用のスタブコードを生成するための protoc プラグインです。

# バージョンを指定してインストールする方法(推奨)
$ go install google.golang.org/protobuf/cmd/protoc-gen-go@v1.28
$ go install google.golang.org/grpc/cmd/protoc-gen-go-grpc@v1.2

# 最新バージョンをインストールする方法
$ go install google.golang.org/protobuf/cmd/protoc-gen-go@latest
$ go install google.golang.org/grpc/cmd/protoc-gen-go-grpc@latest

プロジェクトの作成と gRPC-Go のインストール

まずは Go 言語用のプロジェクトを作成します。 モジュール名は com.example/grpc-sample としていますが、GitHub で管理する予定であれば、リポジトリ名に合わせて github.com/<USER>/grpc-sample のような名前にしてください。 これが、プロジェクト内で作成する Go パッケージをインポートするときのプレフィックスになります。

$ mkdir grpc-sample && cd grpc-sample
$ go mod init com.example/grpc-sample

あとは、gRPC サーバーとクライアントの実装に使用する gRPC-Go パッケージの依存関係を追加しておきます。

$ go get google.golang.org/grpc

.proto ファイルを作成する

proto/echo/echo.proto ファイルを作成して、次のように記述します。 Go 言語用のオプション option go_package で、出力する .go ファイルを echo パッケージに配置するように指定しています。

proto/echo/echo.proto
syntax = "proto3";

package echo;

option go_package = "example.com/grpc-sample/echo";

// Echo メソッドを持つ EchoService の定義
service EchoService {
  rpc Echo (EchoRequest) returns (EchoResponse);
}

// Echo に送るリクエストメッセージの定義
message EchoRequest {
  string message = 1;
}

// Echo が返すレスポンスメッセージの定義
message EchoResponse {
  string message = 1;
}

ここでは、EchoService というサービスが、Echo というメソッドを提供するよう定義しています。

.proto ファイルをコンパイルする

protoc コマンドを実行して、.proto ファイルからシリアライズ用のコードと、gRPC 関連のスタブコードを生成します。

$ protoc --go_out=. \
         --go_opt=paths=source_relative \
         --go-grpc_out=. \
         --go-grpc_opt=paths=source_relative \
         --proto_path=proto \
         proto/echo/*.proto

それぞれのオプションは次のような意味があります。

  • --go_outprotoc-gen-go プラグインによる生成コードの出力先ディレクトリ
  • --go_optprotoc-gen-go プラグインに渡すオプション
  • --go-grpc_outprotoc-gen-go-grpc プラグインによる生成コードの出力先ディレクトリ
  • --go-grpc_optprotoc-gen-go-grpc プラグインに渡すオプション
  • --proto_path.proto ファイル内で別の .proto ファイルをインポートしようとする場合、ここで指定したディレクトリからの相対パスで指定することになります。また、出力ファイル (.pg.go) のディレクトリ構造を入力ファイル (.proto) のディレクトリ構造に合わせるとき(後述)、ここで指定したパスを取り除いた階層構造で出力されます。

--go_out オプションを指定することでシリアライズ用のコード (echo.pb.go) を生成、--go-grpc_out オプションを指定することで gRPC 用のスタブコード (echo_grpc.pb.go) を生成してくれます。 追加のオプションで、paths=source_relative を指定することにより、入力ファイル (.proto) と同じディレクトリ構成で .go ファイルを出力するようにしています。

さらに、--proto_path=proto というオプションで、.proto ファイル群のルートディレクトリを指定しています。 これにより、出力先のディレクトリには proto ではなく echo ディレクトリが生成されるようになります。

今回はカレントディレクトリ (.) を出力のルートに指定しているので、結果的に次のように .go ファイルが生成されることになります。

入力ファイル使う protoc プラグイン生成されるファイル
proto/echo/echo.protoprotoc-gen-goecho/echo.pb.go
proto/echo/echo.protoprotoc-gen-go-grpcecho/echo_grpc.pb.go

生成された echo.pb.go ファイルや echo_grpc.pb.go ファイルを覗いてみると、次のようなパッケージ名で定義されていることがわかります。

echo/echo.pb.go(抜粋)
package echo

このパッケージ名は、.proto ファイル内の options go_package で指定したパスに従って自動生成されています(パスの最後の /echo という部分が採用されています)。 また、今回はモジュール名を example.com/grpc-sample と定義したので(go.mod ファイルに書かれているので)、自動生成されたこれらのパッケージをインポートするときは、次のような感じで記述することになります。

import "example.com/grpc-sample/echo"

生成された echo/echo_grpc.pb.go ファイルを覗いてみると、次のようなクライアント実装用の EchoServiceClient インタフェースや、サーバー実装用の EchoServiceServer インタフェースが生成されていることが分かります。

echo/echo_grpc.pb.go
type EchoServiceClient interface {
	Echo(ctx context.Context, in *EchoRequest, opts ...grpc.CallOption) (*EchoResponse, error)
	// ...
}

type EchoServiceServer interface {
	Echo(context.Context, *EchoRequest) (*EchoResponse, error)
	// ...
}

// ...(省略)...

クライアントスタブに関しては、実装も提供されているので、NewEchoServiceClient 関数でそのままインスタンス化して gRPC の API を呼び出すことができます。 サーバー側は各 API の実装を行う必要があります。

gRPC サーバーとクライアントの実装

gRPC を使って通信するサーバーとクライアントは、それぞれ独立したコマンドとして cmd/echo-server ディレクトリ、cmd/echo-client ディレクトリ以下に作成することにします(それぞれ main 関数を作成します)。 Go 言語のプロジェクトで生成する実行ファイルのコードを cmd ディレクトリ以下に配置するのはよくあるプラクティスです。

gRPC サーバーの実装

まずは、EchoServiceServer を実装します。 protoc によって自動生成された echo/echo_grpc.pb.go ファイルで定義されている EchoServiceServer インタフェースを実装していくわけですが、このとき、同じく自動生成されている次のようなモック実装を利用することができます。 このモック実装は空っぽの実装なので、名前に Unimplemented プレフィックスが付いています。

自動生成されたサーバーのモック実装(echo/echo_grpc.pb.go 内)
// UnimplementedEchoServiceServer must be embedded to have forward compatible implementations.
type UnimplementedEchoServiceServer struct {
}

func (UnimplementedEchoServiceServer) Echo(context.Context, *EchoRequest) (*EchoResponse, error) {
	return nil, status.Errorf(codes.Unimplemented, "method Echo not implemented")
}

サーバー実装用の構造体(下記のコードでは type server struct)を定義するときに、上記のモック実装を Golang の構造体埋め込みの仕組み で埋め込むことで、各 API をとりあえず not implemented エラーを返すだけの実装として提供することができます。 こうすることで、すべての API を一度に実装せずに、1 つずつ実装して提供していくことができます。

cmd/echo-server/server.go
package main

import (
	"context"
	"log"

	"example.com/grpc-sample/echo"
)

// EchoService を実装するサーバーの構造体
type server struct {
	echo.UnimplementedEchoServiceServer // とりあえず Not implemented の実装を入れておく
}

// EchoServiceServer インタフェースの Echo メソッドの実装(本物の Echo 実装)
func (s *server) Echo(ctx context.Context, in *echo.EchoRequest) (*echo.EchoResponse, error) {
	log.Printf("Received from client: %v", in.GetMessage())
	return &echo.EchoResponse{Message: "*" + in.GetMessage()}, nil
}

上記の例では、server 構造体に UnimplementedEchoServiceServer のモック実装を埋め込みつつ、Echo メソッドをオーバーライドしています。 結果として、モック実装側の Echo メソッドは使われないのですが、UnimplementedEchoServiceServerserver 構造体に埋め込んだままにしておいて大丈夫です。 上記の Echo メソッドは、クライアントから受信したテキストの先頭に * を付加したテキストをレスポンスとして返しています。

あとは、main 関数で gRPC サーバー (grpc.Server) のインスタンスを生成して、上記の実装を登録すれば OK です。

cmd/echo-server/main.go
package main

import (
	"fmt"
	"log"
	"net"

	"google.golang.org/grpc"

	"example.com/grpc-sample/echo"
)

const port = 52000

func main() {
	// TCP ポートをオープンできるか確認
	lis, err := net.Listen("tcp", fmt.Sprintf(":%d", port))
	if err != nil {
		log.Fatalf("Failed to listen: %v\n", err)
	}

	// gRPC サーバーを生成し、EchoService サーバーの実装を登録する
	s := grpc.NewServer()
	echo.RegisterEchoServiceServer(s, &server{})

	// gRPC サーバーを稼働開始
	log.Printf("Server listening at %v\n", lis.Addr())
	if err := s.Serve(lis); err != nil {
		log.Fatalf("Failed to serve: %v\n", err)
	}
}

gRPC クライアントの実装

gRPC サーバー側が実装できたら、次はクライアント側の実装です。 通信用のクライアントスタブは、protoc で自動生成された NewEchoServiceClient 関数を使って生成することができます。 下記の gRPC クライアント実装では、Echo メソッドを呼び出して AAAAA というメッセージを送り、その応答 (*AAAAA) を単純に出力しています。

cmd/echo-client/main.go
package main

import (
	"context"
	"log"
	"time"

	"google.golang.org/grpc"
	"google.golang.org/grpc/credentials/insecure"

	"example.com/grpc-sample/echo"
)

const addr = "localhost:52000"

func main() {
	// EchoService サーバーへ接続する
	conn, err := grpc.Dial(addr, grpc.WithTransportCredentials(insecure.NewCredentials()))
	if err != nil {
		log.Fatalf("Did not connect: %v\n", err)
	}
	defer conn.Close()
	client := echo.NewEchoServiceClient(conn)

	// Echo メソッドを呼び出す
	ctx, cancel := context.WithTimeout(context.Background(), time.Second)
	defer cancel()
	r, err := client.Echo(ctx, &echo.EchoRequest{Message: "AAAAA"})
	if err != nil {
		log.Fatalf("Could not echo: %v\n", err)
	}
	log.Printf("Received from server: %s\n", r.GetMessage())
}

実行してみる

まず、gRPC のサーバー側を起動します。

$ go run ./cmd/echo-server
2022/05/17 22:00:47 Server listening at [::]:52000

次に、gRPC のクライアント側を起動すると、サーバーと通信してメッセージを受信できていることを確認できます。

$ go run ./cmd/echo-client
2022/05/17 22:01:32 Received from server: *AAAAA

やったー!

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