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Context とは

React の Context(コンテクスト) は、いわゆるグローバル変数の格納領域のようなもので、複数のコンポーネント間でのデータ共有に使用できます。 各コンポーネントから Context 情報にダイレクトにアクセスできるため、prop のように上位のコンポーネントから情報を伝搬させていく必要がありません。

Context をむやみに使うと、コンポーネントの再利用性が下がってしまいますが、アプリケーション全体で使用する次のような情報を Context で管理するとコードがすっきりします。

  • ログイン中のユーザー情報(認証情報)
  • 言語設定
  • テーマ設定

Context の使い方

Context を作成する (createContext)

Context オブジェクトは、React.createContext() で作成することができます。 複数のコンポーネントから参照することになるので、Context オブジェクトは単独のファイルとしてモジュール化しておきます。

React.createContext() の引数に任意のオブジェクトを渡すと、その値を初期値とする Context オブジェクトが生成されます。 次の例では、string 型のデータを保持する Context オブジェクトを生成しています。

MyContext.ts
import * as React from 'react';

export const MyContext: React.Context<string> =
  React.createContext<string>('Default message');

Context を参照する (useContext)

関数コンポーネント内で、Context が保持するデータを参照するには、React.useContext() を使用します。 デフォルトでは、React.createContext() の引数に設定したデフォルト値が返されます。 上記の例では、Default message というデフォルトテキストを設定しているので、その値が返されることになります。

App.tsx
import * as React from 'react';
import { MyContext } from './MyContext';

export const App: React.FC = () => {
  const message: string = React.useContext(MyContext);  //=> "Default message"
  return (
    <div>{message}</div>
  );
};

このように、どの階層にあるコンポーネントからも、React.useContext() を使って Context が保持する情報を参照することができます。 しかし、このままだと、Context が保持する値を変更することができません。

Context の値を更新してコンポーネントを再描画する

前述の React.createContext() で作成した MyContext には、MyContext.Provider というコンポーネントが付随しています。 このコンポーネントは、次のように value 属性と一緒に使用します。

<MyContext.Provider value={データ}>
  子コンポーネント
</MyContext.Provider>

このようにすると、子コンポーネント内で React.useContext() を呼び出したときに返される値が、上記の value 属性で指定した値に変化します。 つまり、この value 属性の値を、ステートオブジェクトを使って設定することで、子コンポーネントを新しい Context データで再描画できるようになります。

次の例では、MyContext.Providervalue 属性に、React.useState() で作成した message ステートオブジェクトを設定しています。 message ステートオブジェクトの初期値は、React.useContext() が返すデフォルト値 (Default message) に設定しています。 この message ステートオブジェクトの値を setMessage 関数で変更することにより、MyContext.Provider 以下のコンポーネントに再描画がかかります。

App.tsx
import * as React from 'react';
import { MyContext } from './MyContext';
import { Child } from './Child';

export const App: React.FC = () => {
  const [message, setMessage] = React.useState(React.useContext(MyContext));

  return (
    <MyContext.Provider value={message}>
      <Child /><br />
      <button onClick={()=>setMessage('New message')}>Change</button>
    </MyContext.Provider>
  );
};

Child コンポーネントは、次のように MyContext の内容を表示しているだけです。

Child.tsx
import * as React from 'react';
import { MyContext } from './MyContext';

export const Child: React.FC = () => {
  const message = React.useContext(MyContext);
  return <b>{message}</b>;
};
/p/qoz8fow/img-001.png

Change ボタンを押すと、Child コンポーネントに表示されるメッセージが Default message から New message に変化します。

どのコンポーネントからでも Context の値を更新できるようにする

ここまで見てきたように、Context データの変化を子コンポーネントに伝えるには、Context.Provider コンポーネントの value 属性の値をうまく更新してやる必要があります。 このような更新処理は、Context.Provider を配置しているコンポーネント内では容易に行えますが(前述の例)、任意の階層のコンポーネントから Context データを更新できるようにする には少々工夫が必要です。 ここでは、Context データとして、自身のデータを更新するためのセッター関数を持つようにする例を示します。

下記は、作成するアプリの表示例です。

/p/qoz8fow/img-002.png

UserInfo コンポーネントは Context データの内容を表示し、UpdateButtons コンポーネントは Context データの内容を変更するボタンを表示します。 例えば、Change username ボタンを押すと、Context が保持する username の値が変化し、画面上の表示も更新されます。 UserInfoUpdateButtons は prop を介した親子構造により連携しているわけではなく、Context によってのみ連携しています。

AppContext コンポーネントの作成

ここで定義する AppContext は、アプリ全体で共有する 2 つの文字列データ(usernameapiToken)を持ち、さらにそれらの値を更新するためのセッター関数 (setUsernamesetApiToken) を持ちます。

AppContext.tsx
import * as React from 'react';

// AppContext が保持する値の型
export interface AppContextType {
  username: string;
  apiToken: string;
  setUsername: (username: string) => void;
  setApiToken: (apiToken: string) => void;
}

// AppContext の生成
export const AppContext = React.createContext<AppContextType>({
  username: 'Default username',  // デフォルト値
  apiToken: 'Default apiToken',  // デフォルト値
  setUsername: (username: string) => {},  // ダミー関数
  setApiToken: (apiToken: string) => {},  // ダミー関数
});

// AppContext にセッター関数を登録するためのコンポーネント
export const AppContextProvider: React.FC = ({children}) => {
  // デフォルト値の取得用
  const context: AppContextType = React.useContext(AppContext);

  // ステートオブジェクト作成
  const [username, setUsername] = React.useState(context.username);
  const [apiToken, setApiToken] = React.useState(context.apiToken);

  // 下位コンポーネントへ渡す Context
  const newContext: AppContextType = {
    username, setUsername, apiToken, setApiToken
  };

  return (
    <AppContext.Provider value={newContext}>
      {children}
    </AppContext.Provider>
  );
};

ここでのポイントは、任意の子コンポーネントを AppContext.Provider 以下に配置するための AppContextProvider を定義しているところです。 ここで、React.useState() で作成したステートオブジェクトを使って AppContext データを再構成することで、各種セッター関数が正しく初期化されます。 子コンポーネント ({children}) からセッター関数を呼ぶことにより、AppContextProvider コンポーネントの再描画が走るため、結果的に、関連するすべての子コンポーネントが再描画されることになります。

UserInfo コンポーネントの作成

UserInfo コンポーネントは、AppContext が保持するユーザーデータを単純に表示します。 ここでは React.useContext() をそのまま使っていますが、useAppContext() のようなカスタムフックを作成すれば、よりスッキリしたコードになります。

UserInfo.tsx
import * as React from 'react';
import { AppContext, AppContextType } from './AppContext';

export const UserInfo: React.FC = () => {
  // AppContext.Provider から提供される Context データを参照
  const context: AppContextType = React.useContext(AppContext);

  return <>
    <h2>UserInfo</h2>
    <ul>
      <li><b>username:</b> {context.username}</li>
      <li><b>apiToken:</b> {context.apiToken}</li>
    </ul>
  </>;
};

UpdateButtons コンポーネントの作成

UpdateButtons コンポーネントは、AppContext が保持するデータを変更するためのボタン(Change usernameChange apiToken)を配置します。 AppContext の内容を更新したいときは、AppContext 自身が提供するセッター関数を呼び出すだけで済みます。

UpdateButtons.tsx
import * as React from 'react';
import { AppContext, AppContextType } from './AppContext';

export const UpdateButtons: React.FC = () => {
  // AppContext.Provider から提供される Context データを参照
  const context: AppContextType = React.useContext(AppContext);

  const handleChangeUsername = () => {
    context.setUsername('New username');
  };
  const handleChangeApiToken = () => {
    context.setApiToken('New apiToken');
  };

  return <>
    <h2>UpdateButtons</h2>
    <button onClick={handleChangeUsername}>Change username</button>
    <button onClick={handleChangeApiToken}>Change apiToken</button>
  </>;
};

App コンポーネントの作成

最後に、最上位のコンポーネントである App コンポーネントです。 AppContextProvider の子コンポーネントとして配置された UserInfoUpdateButtons からは、AppContext が保持するデータを参照・変更することができます。

App.tsx
import * as React from 'react';
import { AppContextProvider } from './AppContext';
import { UserInfo } from './UserInfo';
import { UpdateButtons } from './UpdateButtons';

export const App: React.FC = () => {
  return (
    <AppContextProvider>
      <UserInfo />
      <UpdateButtons />
    </AppContextProvider>
  );
};

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